概要
生態と外見
外洋の中深層〜深海 (200〜2,000m) に生息する条鰭類で、現生は 400 種前後。体長 5〜50cm が主流。多くが細長い体型と巨大な顎、長く伸びた歯を持つ。鱗は退化して体は柔軟、黒色〜赤褐色の地味な体色をまとう。腹側や体側に 発光器 (フォトフォア / photophore) が列を成して並び、捕食・カウンターイルミネーション (上方からの月光を打ち消す保護) ・繁殖時のシグナルに使う。垂直日周移動が活発で、夜に表層へ上がり昼間は深層に戻る種が多い。
他分類との違い
ハダカイワシ目 (Myctophiformes) と並ぶ深海の発光性条鰭類だが、ハダカイワシより一般に体長が大きく、顎が極端に発達する。ヒメ目 (Aulopiformes) も深海性だが、本目の方が捕食者寄りで歯と顎の特殊化が著しい。脂鰭を持つ種と持たない種があり、科間多様性が大きい。
名前の由来
学名 Stomiiformes は属名 Stomias に由来し、ギリシア語 stoma (口) を語源とする。深海種の巨大な口を反映した命名。和名「ワニトカゲギス」は鋭い歯列と細長い体形がワニとトカゲを思わせる「魚」(ぎす = キス科の小魚) からの組合せ。
興味深い特徴
下顎下に長い 顎髭 (バーベル / barbel) をぶら下げる種が多く、その先端に発光器を持つ。これを餌のように振って獲物を誘引する「バイオルアー 型捕食」を行う。Aristostomias 属の一部は赤色光を発するが、深海では赤い光は短距離しか届かないため周囲の獲物に気づかれない「隠密照明」として機能する。深海生物は通常赤色を見られないため、本目の魚は捕食上有利。
明日使えるうんちく
「深海の悪魔」「深海の怪物」として図鑑常連のドラゴンフィッシュ (Stomiidae) は最大でも 30cm 程度の小魚で、見た目の迫力に反して比較的小さい。深海撮影の発達で映像が出回るようになったのは 1990 年代以降で、生体観察例はまだ少ない。発光赤色光で獲物を見つけるという生態は、地球上の発光生物の中でも極めて特殊。
