概要
生態と外見
ヌタウナギ綱は、ヤツメウナギ綱と並ぶ無顎類の現生 2 グループの一方で、深海底に住む円筒形の魚状動物。体長 40-100 cm、皮膚はピンク-灰色でぬめぬめした粘液に常時覆われる。脊椎を持たず、頭蓋骨だけは持つという脊椎動物としては極めて原始的な体制で、目は皮膚に埋もれて退化しほぼ機能しない。
他分類との違い
同じ無顎類のヤツメウナギ綱 (Petromyzonti) が河川と海を回遊し他魚に寄生するのに対し、本綱は完全な海産・底生で死肉食 (スカベンジャー) が中心。深海に沈んだクジラ・サメの死体に群がって体内に潜り込み、内部から食い荒らす。発生過程で脊索を持つが脊椎は終始発達しないため、近年は「脊椎動物」に含めるか「脊椎動物の姉妹群 (頭蓋骨は持つが脊椎を欠く myxinoid)」とするか議論が続いている。
名前の由来
ギリシア語 myxa (粘液) で「粘液を出す者」。本綱最大の特徴である粘液分泌をそのまま示す。和名「ヌタウナギ」は「沼田 (ぬた) 鰻」、つまり泥のような粘液を出すウナギ状の魚の意。
興味深い特徴
側線に並ぶ 70-200 個の粘液腺 (slime gland) から、数秒で大量のゲル状粘液を水中に展開する。粘液にはタンパク質性の極細繊維 (径数 nm、長さ十数 cm) が密に絡み、捕食者の鰓を詰まらせて窒息させる防御兵器となる (Fudge et al. 2005)。この繊維はクモの糸並みの引張強度を持ち、生体材料として研究中。
明日使えるうんちく
韓国では「コムジャンオ (꼼장어)」と呼ばれて炭火焼や鍋にされる人気食材。皮はベルトや財布の革製品 (商業名イールスキン) に加工される (実はウナギではなくヌタウナギ革)。日本の駿河湾や相模湾でも深海底引き網で混獲され、近年は珍味として知られるようになってきた。
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