概要
生態と外見
ガザミ科 (Portunidae) ガザミ属の中型〜大型カニで、頭胸甲幅 15〜20 cm 級・体重 200〜800 g 級 (最大 1 kg 級)。体色は雄が青緑色〜暗緑色、雌は褐色〜赤褐色で性的二色型を示す。頭胸甲背面に 3 個の隆条 (種小名 trituberculatus の由来) を持つ。第 5 歩脚 (最後の歩脚) が平らな団扇状に変形した遊泳脚で、自由に海中を遊泳できる点が大きな特徴。日本本州中部以南〜中国・東南アジア沿岸の砂泥底 (水深 5〜30 m) に分布する。
他分類との違い
同科のタイワンガザミ Portunus pelagicus (より熱帯性、頭胸甲に白点斑) と比べ、体色がより暗色で頭胸甲背面の隆条が明瞭。ジャノメガザミ Portunus sanguinolentus と異なり頭胸甲背面に大きな円斑 (蛇目斑) を持たない。ヨーロッパミドリガニ Carcinus maenas と異なり、第 5 歩脚が遊泳脚として完全に変形している (ミドリガニは歩行脚)。
名前の由来
学名 Portunus trituberculatus の属名 Portunus はローマ神話の港の神 Portunus に由来。種小名 trituberculatus は「3 つの結節 (tubercle) を持つ」を意味し、頭胸甲背面の 3 隆条 (実は中央に 1 つ、左右に 1 つずつの 3 個) を指す。Miers により 1876 年に記載。和名「ガザミ」は古語の蟹の呼称が転訛したものとされる。
興味深い特徴
第 5 歩脚の遊泳脚は基部に強力な筋肉を持ち、毎秒数回の高速振動で水中を機敏に泳ぐ。捕食時には砂泥に潜って待ち伏せ、小魚・甲殻類を強靱な鋏で捕獲する。日本では古来「ワタリガニ (渡蟹)」と呼ばれ、瀬戸内海・有明海の重要漁業対象種。漁獲は刺網・かご漁・底曳網で行われ、内子 (卵巣) を持つ雌は秋季に特に珍重される。
明日使えるうんちく
産地により呼称が異なり、瀬戸内海・有明海では「ガザミ」、関東では「ワタリガニ」、九州北部では「タイマンガニ」とも呼ばれる。タイ料理「プーパッポンカリー」(蟹のカレー炒め) の本場素材として知られ、近年は東南アジア産輸入個体も流通量が増えた。日本では中国・韓国・東南アジアからの輸入が増加し、近年は資源回復のため瀬戸内海・有明海で稚ガニ放流事業が実施されている。
基本情報
Portunus trituberculatus
ポルツヌス・トリトゥベルクラトゥス
Swimming crab
スイミングクラブ
15〜20 cm(頭胸甲幅)
200〜800 g(最大1kg級)
肉食(小魚・甲殻類)
砂泥底(水深5-30m)
日本本州中部以南〜中国・東南アジア沿岸
