概要
生態と外見
裸鰓目 (ウミウシ目) アオミノウミウシ科 Glaucus 属の小型浮遊性ウミウシで、体長 3〜4 cm。本種は腹足 (本来の足) を上にした逆さの姿勢で海面に浮遊し、上を向く面 (足側) が鮮やかな青色、下を向く真の背側が銀灰色という対影法 (counter-shading) を示す。これにより上空からは青い海面と、海中からは明るい水面と同化する。胃内ガスで浮力を保ち、海面の表面張力に張り付くように浮遊する。世界中の温帯〜熱帯外洋 (大西洋・太平洋・インド洋) の表層に分布。クラゲ類・ヒドロ虫類 (主にカツオノエボシ Physalia physalis) を採食する。
他分類との違い
同属の Glaucus marginatus (パシフィック・ブルードラゴン、より小型) と比べ、本種は世界中の海洋に広く分布する。アサガオガイ類 (Janthinidae、貝殻を持つ浮遊性腹足類) や Fiona pinnata など他の浮遊性軟体動物が知られるが、本属は海面に逆さに浮かんで生活する数少ない系統。
名前の由来
学名 Glaucus atlanticus の Glaucus はギリシャ神話の海神 Glaucos に由来し、また「青みがかった灰色」の意味も持つ。種小名 atlanticus は最初に大西洋で記載されたことに由来する (Forster 1777 記載)。和名「アオミノウミウシ (青蓑海牛)」は青色の蓑 (体側の枝状突起 cerata) を持つウミウシの意。
興味深い特徴
獲物のカツオノエボシから刺胞 (nematocyst) を消化せずに取り込み (kleptocnidae)、自身の体側突起 (cerata) 先端に貯蔵して捕食者への化学的防御に転用する。ヒトが触れるとカツオノエボシより強い刺胞作用を示す例があり、本種は刺胞を選択的に濃縮するため。
明日使えるうんちく
風や海流の変化で大量に海岸に漂着することがあり、近年では地中海・オーストラリア東岸・南アフリカ沿岸での漂着例が報告される (2020 年代に世界各地で報告増加)。素手で触ると刺胞被害を受けるため海水浴場では警告対象となる。ダーウィンも 1832 年の HMS ビーグル号航海中に本種を観察・記録している (『ビーグル号航海記』)。
基本情報
Glaucus atlanticus
グラウクス・アトランティクス
Blue sea dragon
ブルーシードラゴン
3〜4 cm(体長)
肉食(クラゲ類・ヒドロ虫類(主にカツオノエボシ))
外洋表層
世界中の温帯〜熱帯外洋(大西洋・太平洋・インド洋)
