概要
生態と外見
モクズガニ科 (Varunidae) モクズガニ属の中型カニで、頭胸甲幅 6〜9 cm 級・体重 100〜300 g 級。体色は灰緑色〜暗褐色で、雌雄ともに鋏に密に黒褐色の毛束を持ち、英名 mitten crab (ミトン手袋カニ) の由来となっている。中国東部 (黄河〜珠江流域) と朝鮮半島の河川・河口域に自然分布する両側回遊性甲殻類で、淡水域で成長し汽水〜海水で産卵する。雑食性で水生植物・腐肉・小動物を採食。
他分類との違い
日本在来のモクズガニ Eriocheir japonica と外見が酷似し、識別が困難。本種は頭胸甲側縁の歯数 (4 歯) と鋏毛の色 (黒褐色) で識別される (モクズガニは前向きの 4 歯と褐色の鋏毛)。両者の交雑可能性も指摘されており、両側回遊性の生活史は共通する。ヨーロッパミドリガニ Carcinus maenas と異なり、河川淡水域で長期生活し、産卵時のみ降海する。
名前の由来
学名 Eriocheir sinensis の属名 Eriocheir はギリシャ語 erion (羊毛) + cheir (手) で「毛深い鋏を持つもの」、種小名 sinensis はラテン語「中国の」を意味する。H. Milne Edwards により 1853 年に記載。英名 Chinese mitten crab は鋏の毛束をミトンに喩えた命名、和名「チュウゴクモクズガニ」は原産地と毛深い鋏の特徴を反映した命名。
興味深い特徴
世界的な侵略的外来種で、欧州 (ライン川・テムズ川流域) と北米五大湖・サンフランシスコ湾に侵入定着している。船舶バラスト水を介した拡散が主経路。河川淡水域への遡上能力が高く、護岸・堤防のコンクリートにも巣穴を掘って構造的損害を引き起こす点が、他の侵略的甲殻類にない特徴。中国では「上海蟹」「大閘蟹 (ダージャーシエ)」として高級食材で、雌の卵巣を珍重する伝統がある。
明日使えるうんちく
中国・上海の陽澄湖 (ようちょうこ) 産が最高級ブランドで、9〜11 月の旬には香港・台湾・東南アジアへの輸出が盛んに行われる。日本には観賞・食用目的で輸入されるが、肺吸虫の中間宿主リスクと侵略性から特定外来生物に指定 (2006 年) され、生体輸入・飼育・販売が禁止された。在来モクズガニとの交雑リスクも指摘されている。
基本情報
Eriocheir sinensis
エリオケイル・シネンシス
Chinese mitten crab
チャイニーズミトンクラブ
6〜9 cm(頭胸甲幅)
100〜300 g
雑食(水生植物・腐肉・小動物)
河川・河口域(両側回遊性)
中国東部〜朝鮮半島(黄河〜珠江流域)
