生態と外見
ザリガニ科 (Parastacidae) ケラクス属の大型ザリガニで、体長 20〜25 cm 級・体重 300〜500 g 級 (最大 600 g の記録あり)。雄は鋏 (chela) の外縁に鮮明な赤色の膜状帯を持ち、和名・英名の由来となっている。雌は鋏の赤帯を欠くか不鮮明。オーストラリア北部 (クイーンズランド州・ノーザンテリトリー) からパプアニューギニア南部にかけての熱帯〜亜熱帯河川に自然分布。雑食性で水草・有機物・小型動物を採食、止水〜緩流域を好む。
他分類との違い
南半球の Parastacidae 科に属し、北半球のアメリカザリガニ科 Procambarus・カンブルス科 Cambarus・アスタコス科 Astacus とは大陸分離前のゴンドワナ起源を反映した系統的隔絶を持つ。同属のヤビー Cherax destructor と比べ大型で熱帯適応に偏る。ヤビーは温帯適応で穴掘り行動が顕著。アメリカザリガニとは鋏先端の赤色帯 (本種は外縁、アメリカザリガニは指先) で識別される。
名前の由来
学名 Cherax quadricarinatus の属名 Cherax はギリシャ語 charax (杭・牙) に由来し甲殻類の硬い形質を指す。種小名 quadricarinatus は「4 本の隆条 (carina) を持つ」を意味し、頭胸甲背面に縦走する 4 本の隆条 (4 keels) からの命名。von Martens により 1868 年に記載。和名「レッドクロウ」は英名 redclaw の音写で、観賞用・養殖用流通名として定着した。
興味深い特徴
熱帯〜亜熱帯適応のため低水温に弱く、水温 10℃ 以下で活動を停止し、5℃ 以下で致死。これは温帯のアメリカザリガニとは大きく異なる生理特性。1980 年代以降、北部オーストラリア・東南アジア・中南米で養殖が拡大し、世界の淡水ザリガニ養殖の主要対象種の一つになった。アクアリウム愛好家向けにも青色変異 (blue redclaw) など多様な色彩個体が流通する。
明日使えるうんちく
雌雄判別が容易で、雄の鋏外縁の赤帯が成熟の指標となるため養殖管理上扱いやすい。日本では 2020 年代に観賞用流通が増えたが、低水温で野外越冬が困難なため定着リスクは比較的低いとされる (環境省 2022 年特定外来生物指定見送り)。クルマエビと同様にカロテノイドで体色が変動し、餌料を変えると赤帯の鮮やかさが調整できる。