概要
生態と外見
イチョウガニ科 (Cancridae) イチョウガニ属の中型カニで、頭胸甲幅 15〜25 cm 級・体重 1〜3 kg 級。体色は赤褐色〜橙褐色で、頭胸甲の縁が「パイクラスト」状の連続的凹凸 (10 葉の縁葉) を持つ。北東大西洋 (ノルウェー〜地中海西部・北海・ビスケー湾) の岩礁・砂礫底 (水深 6〜100 m) に分布し、潮間帯から沿岸亜潮間帯まで広く生息する。底生肉食〜雑食で軟体動物・小型甲殻類・棘皮動物を採食。
他分類との違い
同属のアメリカイチョウガニ Cancer borealis と比べ、頭胸甲縁の葉が深く彫り込まれ、体色がより橙色寄り。地中海産近縁の Cancer plebejus は分布が限定的で稀。中国モクズガニ Eriocheir sinensis と異なり、頭胸甲幅が体長より大きく扁平で、毛がない (モクズガニは鋏に密毛)。ヨーロッパミドリガニ Carcinus maenas と異なり、大型で頭胸甲側縁の歯が連続的に並ぶ。
名前の由来
学名 Cancer pagurus の属名 Cancer はラテン語「カニ」(占星術の「巨蟹宮」と同源)、種小名 pagurus はギリシャ語 pagouros (古典の特定のカニ類の呼称) を Latin 化したもの。Linnaeus により 1758 年に Systema Naturae 第 10 版で記載された (動物学命名法上の原典)。和名「ヨーロッパイチョウガニ」は欧州産でイチョウ葉状の頭胸甲縁を持つ点に由来する直訳。
興味深い特徴
英国・アイルランド・フランス・ノルウェーの重要漁業対象種で、年間漁獲量は北東大西洋全体で約 5〜6 万トン (FAO 統計)。寿命は野外個体で 25〜30 年と推定され、性成熟までに 6〜10 年を要する遅成熟種。雌は脱皮直後に交尾し、産卵は翌年で受精卵を約 9 ヶ月抱卵する。鋏は左右非対称で大型側がカッター機能。
明日使えるうんちく
英国伝統料理「dressed crab」の主役で、白身 (脚) と褐色 (頭胸甲内) を分け、頭胸甲に詰め直して提供する。日本ではタラバガニ・ズワイガニほど普及していないが、近年の輸入流通拡大で洋食店で見かける機会が増えた。長期過剰漁獲が懸念され、EU 共通漁業政策下で最小漁獲サイズ (頭胸甲幅 14 cm) が定められている。
基本情報
Cancer pagurus
カンケル・パグルス
Edible crab
エディブルクラブ
15〜25 cm(頭胸甲幅)
1〜3 kg
25〜30 年(野生個体での推定)
肉食(軟体動物・小型甲殻類・棘皮動物)
岩礁・砂礫底(水深6-100m・潮間帯から沿岸亜潮間帯)
北東大西洋(ノルウェー〜地中海西部・北海・ビスケー湾)
