概要
生態と外見
オカヤドカリ科 (Coenobitidae) ヤシガニ属の大型陸生甲殻類で、体長 40 cm 級・脚を広げた幅 1 m 級・体重 4〜5 kg 級 (最大 9 kg の記録あり、無脊椎動物として陸上最大級)。体色は青紫〜暗赤色〜橙色で、地域個体群により大きく変異する。インド洋〜西太平洋の熱帯島嶼 (アフリカ東岸〜ポリネシア) に広く分布し、海岸付近の森林・椰子林に生息。雑食性で果実 (特にココナッツ)・腐肉・小動物を採食する。
他分類との違い
ヤドカリ下目 (Anomura) に属し、ザリガニ・カニ類とは大きく系統的に異なる。成体は他のヤドカリと異なり貝殻を背負わず、頑強な腹節外骨格を発達させて陸上生活に完全適応した点でユニーク。同じオカヤドカリ科のオカヤドカリ Coenobita 属とは異なり、終生貝殻を必要としない。タカアシガニやガザミなど短尾下目 (Brachyura、真のカニ類) と異なり、腹節が明瞭でやや長く、左右非対称の鋏を持つ。
名前の由来
学名 Birgus latro の属名 Birgus は不明瞭な語源 (一説に「腕力ある盗賊」を示すラテン語化造語)、種小名 latro はラテン語「盗賊」を意味し、人家から食物を盗む習性を反映した命名。Linnaeus により 1767 年に記載。英名 coconut crab と和名「ヤシガニ」はいずれもヤシの実を割って食する行動に由来する。日本では小笠原・南西諸島に分布し、宮古島・八重山方言では「アンマー (母)」とも呼ばれる地方がある。
興味深い特徴
陸生甲殻類で最も強力な握力を持ち、ヤシの実外殻 (硬度 4〜5) を鋏で割る能力を持つ。Oka et al. (2016) の力学計測では体重比で約 90 倍の握力 (約 3,300 N) が計測され、これは哺乳類の咬合力に匹敵する。鰓は退化して陸上適応した「呼吸鰓 (branchiostegal lung)」を持ち、水中では数時間で溺死する。幼生期のみ海水中で発達する両側回遊性。
明日使えるうんちく
日本では沖縄県条例で漁獲規制対象。一部地域では食用・観光資源として利用される。蓄積した果実食からの脂肪酸が体内に濃縮され、稀に有毒成分 (魚類由来シガトキシン類似物質) を蓄積する個体も報告されている。TIGHAR による Nikumaroro 島 (キリバス領) の調査では、Amelia Earhart の遺骨が消失した一因としてヤシガニが議論されたが、定説化していない。
基本情報
Birgus latro
ビルグス・ラトロ
Coconut crab
ココナッツクラブ
40 cm(体長。脚を広げた幅1m級)
4〜5 kg(最大9kg)
雑食(果実(特にココナッツ)・腐肉・小動物)
海岸付近の森林・椰子林(陸生)
インド洋〜西太平洋の熱帯島嶼(アフリカ東岸〜ポリネシア。日本では小笠原・南西諸島)
