概要
生態と外見
クマ科クマ属の中型クマで、体長 1.2〜1.9 m・体重 50〜200 kg 級 (雄が大型)。全身黒色の長い体毛、胸の白い半月状斑紋 (和名・英名の由来)、長い前肢と短い後肢、頭部は丸く耳が顕著に大きい。日本本州・四国 (絶滅?)・パキスタン〜東南アジア大陸部・中国・朝鮮半島の山地林に分布し、7 亜種に分けられる。雑食性で果実 (秋のドングリ・ブナの実) を中心に新芽・昆虫・小動物・蜂蜜を採食。IUCN レッドリストでは Vulnerable (VU) 評価。
他分類との違い
同属の他種と比べ、ヒグマ Ursus arctos (褐色・大型・草原性も含む) とは体毛色と体格、ホッキョクグマ U. maritimus (白色・極北性) とは体色と生態、近縁のマレーグマ Helarctos malayanus とは体格 (マレーグマがクマ科最小) で識別される。胸部の月輪状斑紋は本種の最も顕著な識別形質。
名前の由来
学名 Ursus thibetanus の thibetanus は「チベット産の」を意味するラテン語で、標本産地に由来。属名 Ursus はラテン語「クマ」。英名 Asian black bear または Moon bear。和名「ツキノワグマ (月輪熊)」は胸の半月状白斑を月輪に見立てた命名で、江戸期の本草書にもすでに「月輪熊」の名で記載される。
興味深い特徴
木登り能力が高く、秋にドングリ採食のため枝を引き寄せて折り「クマ棚」と呼ばれる枝の集積を樹上に作る習性が知られる。冬眠中の代謝低下と尿素再循環機構は、長期絶食・寝たきりでも筋骨格量と腎機能を維持する仕組みとして医学研究の対象となっている。
明日使えるうんちく
胸の白斑模様は個体ごとに形が異なり、個体識別マーカーとして研究に用いられる。日本では本州ツキノワグマは古来「山の神」として信仰の対象であり、マタギ文化と深く結びついた。秋のドングリ凶作年には里へ降りる頻度が顕著に上昇する。
基本情報
Ursus thibetanus
ウルスス・ティベタヌス
Asian black bear
アジアンブラックベア
