概要
生態と外見
アザラシ科ゼニガタアザラシ属の中型鰭脚類で、体長 1.4〜1.9 m・体重 55〜170 kg 級 (雄が大型)。体色は灰褐色〜淡銀色の地に黒い斑紋が散在し、銭形の斑紋から和名が付いた。北半球温帯沿岸の浅海に広く分布し、北大西洋・北太平洋の沿岸岩礁・砂浜・河口域で繁殖する。日本では北海道襟裳岬周辺が南限の繁殖地。魚類食を中心にイカ・甲殻類も採食、潜水深度は通常 200〜400 m。IUCN レッドリストでは Least Concern (LC) 評価。
他分類との違い
同科のハイイロアザラシ Halichoerus grypus と比べ、体格が小さく顔は丸く、頭部の銭形斑紋が顕著な点で識別される。ハイイロアザラシは頭部が縦に長く側面から「ローマン鼻」状の輪郭を持つ。南極系のウェッデルアザラシ Leptonychotes weddellii と異なり、流氷ではなく岩礁・砂浜上で出産・休息する。
名前の由来
学名 Phoca vitulina の vitulina はラテン語「子牛のような」を意味し、丸い顔と鳴き声を指す。属名 Phoca はギリシャ語 phōkē (アザラシ) に由来。和名「ゼニガタ」は江戸期の通貨「銭」形の体側斑紋を指し、北海道アイヌでは「トカリ」と呼ばれた。
興味深い特徴
優れた水中聴覚を持ち、ヒゲ (vibrissae) で水流の微細な変化を感知して魚を追跡する。襟裳岬の個体群は本種で最も低緯度の繁殖集団で、20 世紀後半に一時 300 頭以下まで減少したが、保護により 2010 年代以降 1,000 頭超まで回復した (北海道水産研究本部報告)。
明日使えるうんちく
子は生後数時間で泳ぎ始め、母乳哺育期間は約 4 週間でゾウアザラシ類など大型種と同程度の長さ (鰭脚類の標準的範囲)。出産前後に脱毛を済ませているため、生後すぐ水中生活に適応できる。北半球全体で多数の地域型が議論されてきたが、現在は 5 亜種に整理されている (Berta & Churchill 2012)。
基本情報
Phoca vitulina
フォカ・ウィトゥリナ
Harbor seal
ハーバーシール
