概要
生態と外見
タコ目マダコ科マダコ属の中型八腕類で、外套長 12〜25 cm・腕を含めた全長は 60〜100 cm 級。体重は通常 3〜10 kg。体色は灰褐色〜赤褐色で、皮膚の色素胞 (chromatophore) と虹色胞 (iridophore) を用いて瞬時に体色・模様を変える。地中海・北東大西洋・西アフリカ沿岸の岩礁・砂礫帯 (水深 0〜200 m) に広く分布する (※従来は全世界温暖海に広く分布する単一種とされたが、近年の分子系統解析で複数の隠蔽種に分割されつつあり、本種は地中海・大西洋東岸個体群を指す)。夜行性で甲殻類・二枚貝を主に採食。
他分類との違い
同科のミズダコ Enteroctopus dofleini (北太平洋寒帯) と比べ、体格は遥かに小さく温暖海域に分布する。同属の南太平洋種 Octopus cyanea と異なり、地中海・大西洋に分布が限定される。同じ無脊椎動物の中でもイカ類 (Decabrachia) は腕 10 本 + 内殻 (グラジウス) を持つのに対し、本種を含むタコ類 (Octopoda) は腕 8 本で内殻を欠く。
名前の由来
学名 Octopus vulgaris の Octopus はギリシャ語 októ (8) + poús (足) で「八本足」を意味し、vulgaris はラテン語「ありふれた」。和名「マダコ (真蛸)」は江戸期からの呼称で、「本物のタコ・主たるタコ」の意。英名 Common octopus も同じく「普通のタコ」を意味する。
興味深い特徴
8 腕に約 2,000 個の吸盤を持ち、各吸盤に化学受容器 (味覚) と機械受容器 (触覚) を備え「腕で味を見る」。約 5 億個のニューロンのうち約 3 分の 2 が腕に分散し、中央脳から独立に腕単位で問題解決行動を示す (Hochner et al. 2006)。瓶の蓋を回して開ける学習行動が飼育下で報告されており、軟体動物として極めて高い認知能力を示す。
明日使えるうんちく
寿命は 1〜2 年と短く、雌は産卵後に世話をしながら絶食し産卵後数か月で衰弱死する半殖性 (semelparous) の生活史を持つ。日本の市場で「マダコ」として流通するのは本種の近縁種 (太平洋型の隠蔽種) で、地中海産との分子的差は属内分岐に近い。墨を吐く行動は捕食者からの逃避と化学的撹乱 (チロシナーゼ含有でアミノ酸感覚を妨害) の二重機能とされる。
基本情報
Octopus vulgaris
オクトプス・ウルガリス
Common octopus
コモンオクトパス
60〜100 cm(腕を含めた全長(外套長12-25cm))
3〜10 kg
1〜2 年(半殖性で雌は産卵後死亡)
肉食(甲殻類・二枚貝が主)
夜行性
岩礁・砂礫帯(水深0-200m)
地中海・北東大西洋・西アフリカ沿岸
