概要
生態と外見
オウムガイ目オウムガイ科オウムガイ属の中型外殻性頭足類で、殻径 15〜25 cm、外套から伸びる約 90 本の触手 (cirri) を持つ (他の現生頭足類は腕 8 本または 10 本)。殻はラテラル方向に螺旋を描く石灰質の隔壁殻 (chambered shell) で、内部は約 30 の気室に分かれ気体・液体の量を調節して中性浮力を保つ。体色は殻表面に白地に赤褐色の縞模様 (波状の Bands)。インド太平洋熱帯 (フィリピン・パプアニューギニア・ニューカレドニア・パラオ・オーストラリア東岸) の岩礁斜面 (水深 100〜500 m) に分布。腐肉・甲殻類・小魚を採食。
他分類との違い
タコ目・ツツイカ目・コウイカ目などの外套頭足類 (Coleoidea) と異なり、本種を含むオウムガイ亜綱は殻を体の外側に持つ唯一の現生系統で、オウムガイ目 (Nautilida) はシルル紀 (~4.5 億年前) 以降、形態が比較的保守的に維持されてきた系統とされる (相対的に保守的な系統)。腕の代わりに約 90 本の触手を持ち、吸盤を持たず代わりに触手表面の粘液で獲物を捕える。
名前の由来
学名 Nautilus pompilius の Nautilus はギリシャ語 naútēs (船乗り) に由来し、殻が船の帆や船底のように水中を漂う様を指す (古代ローマ時代から呼称あり)。種小名 pompilius はギリシャ語 pompílios (パイロットフィッシュ・案内魚) を意訳した語 (Linnaeus 1758 記載)。和名「オウムガイ (鸚鵡貝)」は嘴 (くちばし) がオウムに似ることに由来する。
興味深い特徴
頭足類で唯一のピンホールアイ (pinhole eye) を持ち、レンズを持たない開放型の眼で像を形成する。視覚分解能は他頭足類より低いが、ピンホール構造の進化的単純さから視覚進化の研究対象とされる (Land & Nilsson 2012)。殻内の気室間に細い通路 (siphuncle) を持ち、ここを使って気体・液体を移動させ浮力を能動的に調節できる。
明日使えるうんちく
殻は古来より装飾品・宝飾・酒杯 (オウムガイ杯) として珍重され、ヨーロッパでは 16〜17 世紀に金細工を施した「ノーチラスカップ」が貴族の蒐集品となった。殻断面の螺旋は対数螺旋に近く、黄金比の例として美術・数学の教材で引用されてきた (ただし厳密な黄金螺旋ではない)。野生での寿命は推定 15〜20 年と頭足類中で長寿で、多くの頭足類が一回繁殖の半殖性なのに対し、本種は数年にわたり繰り返し産卵する繁殖様式を示す数少ない例。
基本情報
Nautilus pompilius
ナウティルス・ポンピリウス
Chambered nautilus
チェンバードノーティラス
15〜25 cm(殻径)
15〜20 年(野生での推定・繰り返し産卵)
肉食(腐肉・甲殻類・小魚)
岩礁斜面(水深100-500m)
インド太平洋熱帯(フィリピン・パプアニューギニア・ニューカレドニア・パラオ・オーストラリア東岸)
