概要
生態と外見
アザラシ科モンクアザラシ属の中型鰭脚類で、体長 2.4〜2.8 m・体重 240〜300 kg 級 (雌が雄よりやや大型)。体色は暗褐色〜黒色の地に淡い腹部斑紋を持ち、成獣雄は腹側に大きな白色斑が現れる。頭部は丸く、頬の周囲に短い毛が密集する。地中海・東部大西洋 (北西アフリカ・マデイラ諸島) に分布し、現在は岩場の海食洞内で出産・休息する閉鎖的繁殖を行う。本種はかつてビーチで群居繁殖していたが、人為的撹乱により海食洞へ繁殖場所を変化させた事例とされる。IUCN レッドリストでは Endangered (EN, 2023 評価)。
他分類との違い
同属のハワイモンクアザラシ Neomonachus schauinslandi (旧 Monachus schauinslandi) と比べ、地中海・北西アフリカ系統で分布が大きく異なる。2014 年の分子系統解析で地中海系の Monachus 属 (本種のみ) と太平洋・カリブ系の Neomonachus 属 (ハワイモンクアザラシ + 絶滅カリブモンクアザラシ) の 2 属に分離された (Scheel et al. 2014, ZooKeys 409:1-33)。流氷帯依存型のアザラシ科他種と異なり、温暖海域の沿岸生態系に特化した。
名前の由来
学名 Monachus monachus の Monachus はギリシャ語 monachos (修道士・隠者) で、隠遁的に岩場で生活する習性、または頭部の体毛配列が修道士の頭巾を連想させることに由来。和名「チチュウカイモンクアザラシ」は分布 (地中海) と学名 monk の組み合わせ。英名 Mediterranean monk seal も同様の組み合わせ。
興味深い特徴
世界で最も絶滅に近いアザラシ科の一種で、現存個体数は約 700〜800 頭 (IUCN 2023)。地中海地域 (ギリシャ・トルコ・キプロス・モロッコ) に分散した小集団と、北西アフリカのカナリア諸島・マデイラ諸島の集団に分かれる。古代ギリシャでは沿岸の海生哺乳類として記録があり、紀元前 5 世紀ヘロドトス『歴史』に「海のアザラシ」として登場する。
明日使えるうんちく
カリブモンクアザラシ Neomonachus tropicalis は 2008 年に IUCN により公式に絶滅 (Extinct) と判定され、20 世紀の鰭脚類絶滅例として知られる。本種と Neomonachus schauinslandi は現存する 2 種のモンクアザラシで、いずれも温暖海域沿岸の特殊生態系として保全生物学的に注目されている。
基本情報
Monachus monachus
モナクス・モナクス
Mediterranean monk seal
メディタレニアンモンクシール
