概要
生態と外見
ツツイカ目ヤリイカ科ヤリイカ属の中型十腕類で、外套長 15〜40 cm・全長 30〜60 cm、体重 0.5〜2 kg 級。体形は細長く尖り (英名 squid・和名「ヤリ (槍)」の由来)、外套後端に菱形の鰭を持つ。体色は淡灰褐色〜半透明で、皮膚に色素胞を持つ。北東大西洋 (北海〜西アフリカ沿岸)・地中海・黒海の沿岸 (水深 20〜250 m) に分布。小魚・甲殻類を採食。
他分類との違い
同科同属のアメリカケンサキイカ Doryteuthis pealeii (北西大西洋) や日本のヤリイカ Heterololigo bleekeri と比べ、本種は地中海・北東大西洋に限定的に分布する。同じツツイカ目のダイオウイカ科 (深海性) と異なり、本種を含むヤリイカ科は沿岸性で群泳する習性を持つ。
名前の由来
学名 Loligo vulgaris の Loligo はラテン語「イカ」を意味する古代ローマ語で、Plinius (大プリニウス、1 世紀) の『博物誌』にも記載がある。種小名 vulgaris はラテン語「ありふれた」(Lamarck 1798 記載)。和名「ヨーロッパヤリイカ」は分布域に由来する。日本のヤリイカは別属 (Heterololigo) のため和名上は区別される。
興味深い特徴
本種を含むヤリイカ属 Loligo は外套に走る巨大軸索 (giant axon、直径約 0.5〜1 mm でヒト神経軸索の数十〜100 倍) を持つ。この巨大軸索を用いた Hodgkin & Huxley (1952) の研究は活動電位のイオン機構を解明し、1963 年ノーベル生理学・医学賞の対象となった (実験には主に近縁の Loligo forbesii が用いられた)。ヤリイカ属の巨大軸索は現代の神経科学・電気生理学の発展に決定的役割を果たした。
明日使えるうんちく
地中海料理・南欧料理 (calamari) の最重要食材の一つで、フリットや煮込みで広く流通する。スペイン・ポルトガル・イタリア・ギリシャの沿岸漁業では年間 1〜2 万トン水揚げされる。寿命は 1〜1.5 年と短く、春〜夏に産卵後死亡する半殖性。日本市場には乾燥・冷凍品で輸入される (calamares 表示)。
基本情報
Loligo vulgaris
ロリゴ・ウルガリス
European squid
ヨーロピアンスクイッド
30〜60 cm(全長(外套長15-40cm))
0.5〜2 kg
12〜18 年(単位は月・半殖性)
肉食(小魚・甲殻類)
沿岸(水深20-250m)
北東大西洋・地中海・黒海(北海〜西アフリカ沿岸)
