概要
生態と外見
テナガザル科テナガザル属の小型類人猿で、体長 42〜58 cm・体重 4.5〜7.5 kg 級。尾を欠き、極端に長い前肢 (体長比 1.5 倍以上) を持つ。体色は個体差が大きく黒色〜淡黄色まで連続的に変異するが、手足の先端と顔の周囲が常に白く縁取られる点で識別される。タイ・ミャンマー南部・マレー半島・スマトラ島北部の熱帯雨林林冠部に分布し、果実食を中心とした雑食性。IUCN レッドリストでは Endangered (EN) 評価。
他分類との違い
同属のフクロテナガザル Symphalangus syndactylus と比べ、体格が小さく (フクロテナガザルは 10〜13 kg 級)、喉の鳴嚢が発達しない点で識別される。同じテナガザル科のクロテナガザル属 Nomascus と異なり性的二色型 (雌雄の毛色差) を持たず、毛色変異が個体差として現れる。
名前の由来
学名 Hylobates lar の Hylobates はギリシャ語 hylē (森) + batēs (歩く者) で「森を渡る者」を意味し、樹冠での腕渡り (brachiation) を指す。種小名 lar はローマ神話の家屋守護神ラルに由来。和名「シロテテナガザル」は手足の白い縁取りに由来。
興味深い特徴
腕渡り (brachiation) と呼ばれる前肢で枝から枝へ振り子状に移動する運動様式の代表例で、時速 15 km 級の移動速度と一跳び 10 m 級の跳躍が観察される。雌雄ペアで縄張りを持ち、早朝の二重唱 (duet) で縄張り宣言を行う。ペアの絆形成は霊長類で稀な単婚的特徴とされてきたが、近年の研究では遺伝的多婚性 (婚外交配) も観察されている。
明日使えるうんちく
テナガザル類は大型類人猿 (Hominidae) と同じ上科 Hominoidea に属し、ヒト・チンパンジー・ゴリラ・オランウータンとは約 1,800 万年前に分岐した姉妹群。「小型類人猿 (lesser apes)」と総称され、尾を欠き直立姿勢が可能な点でオナガザル科とは明確に区別される。
基本情報
Hylobates lar
ヒュロバテス・ラル
Lar gibbon
ラーギボン
