基本情報
Enhydra lutris
エンヒドラ・ルトリス
Sea otter
シーオッター
生態と外見
食肉目イタチ科の海生哺乳類で、雄は全長 1.2〜1.5 m・体重 22〜45 kg 級、雌は 20〜33 kg 級。全身茶褐色〜暗褐色の密毛で覆われ、頭部のみ加齢で灰白色化する。北太平洋沿岸 (カムチャツカ・千島・アリューシャン・アラスカ・カリフォルニア) に分布し、現在 3 亜種 (ロシア E. l. lutris・北米北 E. l. kenyoni・カリフォルニア E. l. nereis) が認められ世界個体数約 12 万頭。水中の海底でウニ・アワビ・カニ・二枚貝を採食。IUCN レッドリストでは Endangered (EN) 評価。
他分類との違い
イタチ科で最も水生に特化した種で、同科のカワウソ Lutra lutra と比べ約 2〜3 倍の体重、後肢が完全な水かき状で陸上歩行が極めて困難 (カワウソは陸海両用)。鰭脚類 (アシカ・アザラシ・セイウチ) のような皮下脂肪層を持たず、代わりに世界最高密度の毛皮 (1 cm² あたり 100,000 本超) で断熱する点が独自。
名前の由来
学名 Enhydra lutris の Enhydra はギリシャ語 en (中に) + hudōr (水) の合成で「水中に住むもの」、lutris はラテン語 lutra (カワウソ)。和名「ラッコ」はアイヌ語 rakko(海の獣) の直接借用で、北海道では古来から知られた動物。
興味深い特徴
道具を使う数少ない非霊長類哺乳類として知られ、胸の上に石を載せ二枚貝を叩き割って中身を取り出す。お気に入りの石を脇下のたるみに入れて持ち運ぶ個体もおり、これは哺乳類における「個体所有物」の数少ない事例。仰向けに浮いて休息・採食・育児を行う独特の海面生活様式を持つ。
明日使えるうんちく
18〜19 世紀の毛皮交易 (ロシア・米国・英国) で本種は 100 万頭以上が捕獲され絶滅寸前まで追い込まれた。1911 年の北太平洋オットセイ条約で保護されて回復したが、現在もカリフォルニア南部沿岸では沿岸開発と原油流出による地域絶滅リスクが続いている。母子は海藻 (ジャイアントケルプ) に体を絡めて流されないようにする習性があり、これは「ケルプ・アンカリング」と呼ばれる。
