施設の特徴
本願清水イトヨの里の特徴
全国でも数少ない、陸封型イトヨの南限地を見守る
本願清水イトヨの里は、国指定天然記念物「本願清水イトヨ生息地」の保護と、水環境の学習を目的に整備された施設です。主役は、背に3本のトゲをもつトゲウオ科の小さな魚・イトヨ。なかでも本願清水にすむのは、一生を淡水で過ごす陸封型で、夏でも水温20度以下、年間を通じて15度前後の湧水が欠かせません。本願清水は、陸封型イトヨの生息地として全国でも数か所しかない場所のひとつであり、南限地としても知られます。大きな魚ではありませんが、冷たい湧水に支えられて命をつなぐ、越前おおのの水文化を象徴する生き物です。
生息池を“水中から”観察する、湧水地一体型の展示
展示方法の特徴は、イトヨを水槽に閉じ込めて見せるのではなく、実際の生息池と結びつけて観察できることです。館内には、イトヨや水中生物を間近に見られる観察ゾーンがあり、池の中をのぞくようにその暮らしを追えます。巨大なイトヨ模型に触れられる「イトヨとはゾーン」や、卵や巣の中に入る感覚で学ぶ体験型展示もあり、背中のトゲ、巣づくり、天敵との関係といった小さな魚の生態を、子どもにも分かりやすく伝えています。パネルや映像だけでなく、湧水、大野盆地、地下水の循環まで一緒に見せることで、「イトヨがいる場所そのもの」を展示にしているのが魅力です。
巣づくりと子育てを通して、繁殖の不思議を知る
イトヨの繁殖は、この施設でぜひ注目したいテーマです。繁殖期のオスは体に婚姻色をまとい、なわばりをつくり、水底に巣を構えます。メスを巣へ誘導して産卵させたあと、卵やふ化した仔魚を守るのはオスの役割です。小さな魚でありながら、巣づくり、求愛、卵の保護、子育てまで見られる点は、イトヨならではの行動学的なおもしろさです。本願清水イトヨの里では、こうした繁殖行動を学習展示として伝えるだけでなく、生息池の水温や湧水量に配慮し、イトヨが繁殖できる環境を保つ取り組みも行っています。
保護活動まで見える、地域ぐるみの希少魚ミュージアム
本願清水イトヨの里の価値は、生き物を見せるだけでなく、保全の現場を学べる点にもあります。地下水位が下がったり、夏場に水温が上がったりすると、冷水を好むイトヨの生息は難しくなります。そのため、本願清水では湧水環境を維持するための整備や水量調整が行われ、清掃活動や学習活動も続けられています。市内の中学生が参加する「イトヨ守り隊」では、水温調査、顕微鏡観察、河川の生き物調査などを通じて、イトヨを守る視点を育てています。希少魚の姿を観察し、その魚が生き続けるために必要な水・人・地域の関わりまで学べる、北陸でも貴重な湧水生態系の学習拠点です。
