施設の特徴
新江ノ島水族館の特徴
相模湾・クラゲ・深海まで、生物そのものの個性が濃い水族館
新江ノ島水族館の核にあるのは、目の前に広がる相模湾の生物多様性です。相模湾は暖流と寒流、浅場から深海までが近接する海として紹介されており、館内では岩礁、干潟、アマモ場、沿岸、深場などを切り分けて、そこにすむ魚や無脊椎動物を見せています。相模湾大水槽では約8,000匹のマイワシの群泳が大きな見どころで、銀色の群れが形を変えながら泳ぐ姿から、単体ではなく「群れで生きる魚」の迫力を体感できます。さらに、世界初のシラス常設展示への挑戦として、生まれたばかりのシラスから成長過程までを見られる展示もあり、湘南の身近な生物を研究対象として深く掘り下げている点が独自です。
クラゲ展示も“えのすい”を象徴する分野です。70年以上にわたるクラゲの飼育研究と展示経験を背景に、クラゲファンタジーホールでは常時約14種のクラゲを公開し、世界最大級のクラゲのひとつとされるパシフィックシーネットルなども紹介されています。国内外の多様なクラゲを、ただ水槽に入れるのではなく、半ドーム型の空間や球型水槽、照明演出によって、浮遊する体のつくりや拍動の美しさが伝わるように見せているのが特徴です。口コミでもクラゲ展示の美しさや落ち着いた雰囲気に触れる声が多く、写真映えする展示でありながら、生物としての不思議さにも目が向く構成になっています。
生態を“環境ごと”見せる展示と、研究の現場を開く深海展示
展示方法では、相模湾を立体的に理解できる水槽設計が際立ちます。沿岸水槽はスロープに沿ってだんだん深くなる構成で、浅い海から深場へと生物相が変化する様子を歩きながら観察できます。岩礁水槽や海岸水槽では、海藻の森、干潟、アマモ場、漁港など、実際の相模湾にある環境を再現し、魚がどこに隠れ、何を食べ、どのように暮らすのかを想像しやすくしています。イルカショースタジアムではバンドウイルカやハナゴンドウの行動をパフォーマンスとして見せ、相模湾や江の島の景観も背景に取り込みながら、鯨類の身体能力やトレーナーとの関係性を伝えています。
深海展示は、新江ノ島水族館の相対的な強みが特に明確な分野です。JAMSTECとの共同研究により、日本初とされる深海生物の長期飼育法の研究に取り組み、その過程を展示内で公開しています。化学合成生態系水槽では、湧水域、鯨骨生物群集、熱水噴出域という特殊な深海環境を再現し、通常は潜水調査船や探査機でなければ出会いにくい生物の世界を紹介しています。深海を「珍しい魚の展示」で終わらせず、採集・飼育・環境再現・研究の難しさまで見せる点は、一般的な水族館展示から一歩踏み込んだ魅力です。
繁殖・飼育技術を、来館者に伝える取り組み
繁殖・飼育の面では、シラスの累代繁殖に成功していることが大きな特筆点です。食卓では身近な存在でありながら、生きたシラスの生態や成長過程は分かっていない部分も多く、新江ノ島水族館では常設展示を通じて、飼育研究で得られた知見を来館者に伝えています。また、前身から続くイルカ飼育の蓄積もあり、バンドウイルカの繁殖に関する記録整理、超音波検査を用いた出産日の推定、人工授精による繁殖への取り組みなど、飼育現場の技術を研究発表や解説に結びつけています。クラゲ、シラス、深海生物、イルカという性質の異なる生物を通して、見せるだけでなく「命をつなぎ、飼育技術を更新し続ける水族館」であることが、えのすいの大きな魅力です。
