施設の特徴
鳥羽市立海の博物館の特徴
アワビ・サザエ・海藻から、鳥羽志摩の海を読む
鳥羽市立海の博物館は、魚や貝を水槽で見せる水族館ではなく、海女や漁師がどのように海の生きものと向き合ってきたかを伝える「海と人間」の博物館です。展示の中心にあるのは、鳥羽・志摩の海女が素潜りで獲ってきたアワビ、サザエ、ナマコ、海藻、伊勢湾や熊野灘の漁で扱われてきたカツオ、ブリ、ボラ、イセエビ、カキなど、地域の暮らしを支えてきた海の生物です。志摩半島では現在も海女が操業を続けており、その人数を継続的に調査している点もこの館ならでは。三重県内でも、海の生きものを「食材」や「資源」だけでなく、信仰・技術・地域社会と結びついた存在として見られる施設です。
漁具と海女道具が、生きものの行動を見せてくれる
展示方法の特徴は、生物を直接並べるのではなく、漁具や海女道具を通して「どう獲るか」「なぜその道具になるのか」を見せることです。アワビやサザエを獲る海女道具、魚の群れをとらえる網、タコ壺や籠、カツオやマグロの釣具、ノリやワカメ、カキなどの養殖用具を見ていくと、それぞれの生きもののすむ場所、動き方、成長の仕方に合わせて人間の技術が発達してきたことが分かります。約100艘の木造船を収める船の収蔵庫も、単なる乗り物展示ではなく、磯、湾内、外洋といった漁場の違いと、そこにいる生物の違いを想像させる展示になっています。
獲りすぎない海女漁と、藻場・干潟を守る視点
飼育下繁殖を見せる施設ではありませんが、鳥羽市立海の博物館の生物への向き合い方は、海の資源を持続させる知恵を記録し、伝えることにあります。海女漁では、地域ごとの決まりの中でアワビやサザエ、海藻などを獲りすぎないようにしてきたことが紹介され、海の中の変化を感じ取りながら自然に逆らわず働く姿が伝えられています。また、博物館は三重県内の藻場・干潟・サンゴ礁、宮川河口域のアユ分布などに関する調査報告にも関わってきました。生きものを館内で繁殖させるのではなく、海で生き続けられる環境を調べ、記録する姿勢が、自然史と民俗をつなぐ強みです。
磯や干潟で、展示の先にいる生きものと出会う
館内展示で学んだ海の生きものは、周辺の自然体験にもつながります。博物館の近くには磯や干潟、アマモ場があり、観察会ではタイドプールのウミウシ類やヒトデ類、干潟や藻場のイカ、アミメハギ、ヨウジウオ、コメツキガニなどを探すことができます。漁具の展示を見たあとに実際の海辺へ出ると、道具が生まれた理由や、海女・漁師が見てきた生きものの気配がぐっと近くなります。鳥羽市立海の博物館は、標本や道具の奥にある「生きている海」を想像し、現地の海辺で確かめられる博物館です。
