施設の特徴
札幌市豊平川さけ科学館の特徴
サケ科21種類と札幌の水辺の生きものを見比べる
札幌市豊平川さけ科学館は、豊平川にサケを呼び戻した「カムバックサーモン運動」を背景に生まれた、札幌ならではのサケ専門施設です。主役はサケだけではありません。館内ではサケ、カラフトマス、ベニザケ、ギンザケ、サクラマス、ビワマス、イトウ、ミヤベイワナ、レイクトラウトなど、サケ科魚類を計21種類飼育展示し、さらに「さかな館」ではウグイ、ハナカジカ、トミヨ類、エゾサンショウウオ、エゾアカガエル、ニホンザリガニなど、札幌市内の川や池で見られる水辺の生物を幅広く紹介しています。大都市・札幌の川で自然産卵するサケを軸に、外来種を含む身近な淡水生物まで学べる点が、この館の個性です。
卵・稚魚・親魚・産卵行動まで追える展示構成
展示方法の魅力は、サケの一生を断片ではなく流れとして見せていることです。本館の展示ホールでは、産卵行動と産卵床を再現したジオラマ、重さを体感できるサケの実物大模型、豊平川のサケやカムバックサーモン運動を伝える映像が並びます。飼育展示室ではサケ科の稚魚を種類別の水槽で観察でき、地下観察室では計7面・30トンの池を横から見る水族館的な展示で、冬から春は稚魚の群泳、秋は親ザケなど季節に応じた姿が見られます。屋外かんさつ池では成長したサケ科魚類を観察でき、川へ向かう稚魚から戻ってくる親魚まで、札幌の川と魚の時間を立体的にたどれます。
採卵・ふ化・標識放流まで公開する飼育技術
繁殖・飼育面では、採卵ふ化室の存在が大きな見どころです。ここではサケの採卵・受精作業や卵の飼育を行い、時期が合えばガラス越しに作業の様子を観察できます。採卵した卵は立体式ふ化槽で管理され、放流魚には耳石温度標識を付ける作業も行われています。耳石標識は、戻ってきた親魚が科学館由来の放流魚なのか、自然産卵で生まれた野生魚なのかを調べる手がかりになります。単なる「サケを育てて放す施設」ではなく、飼育、放流、追跡調査をつなげて豊平川のサケの世代交代を見守る施設です。
放流から野生サケの回復へ進む保全拠点
この館の現在の役割は、サケを増やすことから、豊平川で自然に命をつなぐサケを増やすことへ広がっています。開館以来、豊平川でサケ稚魚の放流と親魚の遡上数調査を続けており、近年は札幌ワイルドサーモンプロジェクトとして、研究者、河川管理者、市民とともに自然産卵する野生サケの回復に取り組んでいます。2025年度の豊平川・真駒内川調査では、サケの産卵床113か所、推定遡上数226尾が確認され、確認個体の大半が自然産卵由来の野生魚とされています。稚魚放流体験やサケ科魚類へのエサやり体験も、かわいい魚に触れるだけで終わらず、都市河川で生きものが戻り、繁殖し、次世代へつながる過程を実感できる入口になっています。
