施設の特徴
釧路市立博物館の特徴
釧路湿原と道東の海を代表する生物が集まる自然史展示
釧路市立博物館は、釧路湿原・阿寒湖・道東の海を軸に、北海道東部ならではの生物相をまとめて見られる総合博物館です。1階の自然展示では、釧路湿原の植物、イトウ、キタサンショウウオ、昆虫、鳥類、ほ乳類、貝類、甲殻類、魚類、海獣、クジラ、海藻類までを扱い、釧路の陸・湿原・海をひと続きの生態系として理解できます。特に日本最大の淡水魚で、現在は国内では北海道に分布が限られるイトウ、日本では釧路湿原と国後島で確認されるキタサンショウウオ、釧路地方に生息・渡来する天然記念物の鳥類などは、道東の自然を語るうえで外せない存在です。釧路地方にはタンチョウ、シマフクロウ、オオワシ、オジロワシなど天然記念物に指定された鳥が複数見られ、地域の生物多様性の濃さを実感できます。
標本・レプリカ・ジオラマで、生息環境ごと見せる
展示方法の魅力は、単に標本を並べるのではなく、生物が暮らす環境や行動まで伝える構成にあります。1階では釧路湿原の植物群落、ヨシ・スゲの低層湿原、ミズゴケ湿原、ヤチボウズなどを解説し、イトウやサンショウウオ、海の魚類・海獣はリアルなレプリカや剥製、大画面映像を交えて紹介しています。4階のタンチョウ展示では、釧路湿原を再現したドーム型のジオラマで夏と冬の姿を見せ、渡りをしない北海道東部のタンチョウの暮らしを季節感とともに観察できます。二重らせん階段で「自然」と「人々の歴史」を結ぶ館内構成も、湿原・海・人の営みが切り離せない釧路らしい見せ方です。
昆虫標本と湿原調査が伝える、釧路に残った小さな生物たち
昆虫展示では、標茶町の昆虫研究家・飯島一雄氏が戦後間もなくから集めた標本の一部を通して、釧路湿原にすむトンボ、チョウ、セミ、キリギリスなどを紹介しています。エゾカオジロトンボ、イイジマルリボシヤンマ、カラフトルリシジミのように、寒冷な時代の環境を背景に釧路地方へ残った昆虫も取り上げられ、湿原が「珍しい虫がいる場所」ではなく、過去の気候変動を映す生きた資料庫であることが分かります。1971年度から4年間行われた釧路湿原総合調査では、トンボ46種、チョウ84種を含む約1,150種の昆虫が確認され、調査で集められた標本の一部が展示されています。道東屈指の規模をもつ博物館として、地域の自然を長く記録してきた厚みがここに表れています。
ヒブナ研究と自然史資料の保存が支える、地域生物の保全拠点
生きものの繁殖や保全という点では、釧路市立博物館は「飼育展示」よりも調査・標本保存・研究で力を発揮する施設です。春採湖のヒブナは国指定天然記念物の生息地として知られ、釧路市立博物館の学芸員も参加した共同研究では、ヒブナがクローン繁殖をするフナと約100年前に放流されたキンギョとの交雑に由来し、多様なクローンをもつことが明らかにされました。これは、身近な魚の繁殖様式や遺伝的多様性、外来個体の放流が在来集団へ与える影響を考えるうえで重要な研究です。館には自然科学資料が多数収蔵され、昆虫・植物・鳥類などの標本データの一部も公開されています。展示を見たあとに、釧路の生物がどのように調べられ、守られ、次世代へ引き継がれているのかまで想像できるのが、この博物館の大きな魅力です。
