施設の特徴
宮崎県総合博物館の特徴
宮崎の森・海・山にすむ生きものを県単位で見渡せる
宮崎県総合博物館の自然史展示室は、宮崎県に特徴的な動物・植物・地質を中心に、実物資料やレプリカ、模型を合わせて4,500点以上展示する、県内自然史の入口となる展示です。主役になるのは、照葉樹林にすむムササビやタヌキ、九州では分布が限られるニホンカモシカ、長距離移動で知られるアサギマダラ、県鳥のコシジロヤマドリ、そして宮崎の海岸と深く関わるアカウミガメなど。植物では、世界中で宮崎県にしか自生しないキバナノツキヌキホトトギスや、宮崎で分布が目立つ希少なキノコ・キリノミタケにも触れられます。標高差のある山地と黒潮の影響を受ける海を持つ宮崎らしく、寒い地域の生物と暖かい地域の生物が同じ県内に混在する面白さを、標本を通して一望できます。
ジオラマと感覚展示で、照葉樹林からサンゴの海まで歩く
展示方法の魅力は、標本を単に並べるのではなく、宮崎の環境ごとに生きものを見せる構成にあります。自然史展示室は「宮崎の森」「水辺」「大地」「生物」「ふるさとの自然」などに分かれ、照葉樹林、干潟、サンゴの海をジオラマで再現。森の地表や海中をのぞく潜望鏡、鳥やカエルの鳴き声、動植物の香りを使った展示など、目だけでなく耳や鼻も使って生態を想像できる工夫があります。特に宮崎の照葉樹林は日本でも有数とされ、タブ、シイ、カシなどの森に、哺乳類・鳥類・昆虫類がどう関わっているかをまとめて見られる点がこの館ならではです。
野生の繁殖地と保全課題を、標本から学べる
宮崎県総合博物館は飼育下繁殖を見せる施設ではありませんが、野生生物の繁殖や保全を学ぶ展示が充実しています。アカウミガメの展示では、宮崎県内の砂浜が産卵に適した重要な場所であり、日南市・宮崎市から高鍋町・延岡市にかけての海岸が、アカウミガメとともに県の天然記念物に指定されていることを紹介。カンムリウミスズメは、県北部の枇榔島で繁殖が確認される希少な海鳥として取り上げられ、日本近海に約5,000羽とされる少なさや、国の特別天然記念物であることも伝えています。生体展示ではなく、地域の繁殖地や絶滅リスクを資料化して残すところに、県立博物館としての保全教育の役割が表れています。
宮崎固有の自然を、研究と地域の記憶につなげる博物館
「ふるさとの自然」では、人の暮らしと生きものの関係にも焦点が当てられています。かつて森、草原、小川、ため池で普通に見られた生きものを紹介しながら、開発や環境変化によって絶滅が心配される種が増えている現実まで視野に入れる構成です。幸島のニホンザルについても、サツマイモを洗う行動が群れに伝わった文化的行動として紹介され、動物の行動研究の面白さを一般来館者にも伝えています。宮崎県内の自然資料を収蔵・公開し、研究紀要も発行する同館は、派手な生体展示よりも、宮崎の生物多様性を標本・ジオラマ・調査研究で長く伝えるタイプの博物館です。
