施設の特徴
橿原市昆虫館の特徴
500〜800匹のチョウが舞う、奈良を代表する昆虫の生体展示
橿原市昆虫館の主役は、標本だけではなく“生きている昆虫”を間近に見られる展示です。とくに放蝶温室では、約500平方メートルの空間に、熱帯・亜熱帯地方、とりわけ沖縄地方を中心としたチョウを一年中放しており、その数は通常500〜800匹規模。オオゴマダラ、リュウキュウアサギマダラ、スジグロカバマダラ、ツマベニチョウ、ツマムラサキマダラなど、関西の屋外では普段なかなか出会えない南方系のチョウを、生きた姿で観察できます。奈良県内で、これだけまとまった数のチョウを通年で見られる昆虫専門施設として、地域の自然学習拠点としての存在感が大きい施設です。
温室・ジオラマ・カメラ展示で、昆虫の目線に近づく
展示方法の特徴は、昆虫を「ケースの中の小さな生きもの」として見るだけでなく、環境ごと体験できるよう設計されていることです。放蝶温室は、屋根がチョウの翅を休める姿をイメージした形で、内部は18度以上に保たれ、ヤシやハイビスカスなどの亜熱帯植物、起伏のある地形、せせらぎによって南国的な環境を再現しています。チョウが花や給餌場に集まる様子を歩きながら観察でき、飛び方、休み方、蜜を吸う姿まで自然に近い距離感で見られるのが魅力です。生態展示室では大和三山のふもとの里山をジオラマ化し、タガメ、ゲンゴロウ、ミズカマキリ、ヘラクレスオオカブト、ニジイロクワガタ、ハナカマキリなどを展示。さらに、樹液に集まる昆虫や水中昆虫を小型カメラで観察できる仕組みがあり、虫の視点に近い角度から行動を見られます。
標本と研究展示で、昆虫の進化と不思議さを立体的に学ぶ
標本展示室では、1000点を超える昆虫標本や化石標本を通して、昆虫の進化、体の構造、コミュニケーション、身を守る工夫、人との関わりまでを扱っています。入口付近の「生き物タイムトンネル」では生命の誕生から現代までの流れをたどり、実物の化石に触れられる展示もあります。世界の昆虫を生物地理区ごとに見せる構成は、色や形の美しさだけでなく、どの地域にどんな昆虫がすむのかを比較できる点が読み応えのある展示です。特筆したいのは、カイコのオス成虫の触角や脳を活用し、フェロモン源を探す「におい源探索ロボット」のレプリカ展示。いつでも見られる展示としては同館ならではとされ、東京大学先端科学技術センター神崎研究室・東京工業大学の協力による、昆虫の感覚能力とロボット研究をつなぐユニークな内容です。
飼育管理と里山づくりが支える、生きた昆虫の学び
大規模な繁殖実績を前面に出す施設ではありませんが、橿原市昆虫館の飼育・保全の見どころは、通年の生体展示を支える管理と、周辺環境を使った里山づくりにあります。放蝶温室では、チョウの栄養不足を補うため、館内で展示しているミツバチが集めた蜂蜜に栄養分を加えた給餌を行い、展示個体の状態を維持しています。生態展示でも、昆虫のコンディションに応じて内容を変えながら、生きたカブトムシ・クワガタ、水生昆虫、カマキリ類などを見せています。さらに、2004年から始まった「虫いっぱいの里山づくり」では、昆虫館周辺の雑木林、野原、畑、池などを活用し、観察会や昆虫観察教室、池掘り、竹切り、虫のすみか作りなどを継続。学芸員、専門家、ボランティアが関わり、館内展示と野外の生息環境をつなげている点が、標本館にとどまらない橿原市昆虫館らしさです。
