施設の特徴
伊丹市昆虫館の特徴
約14種1000匹のチョウが舞う、生きた昆虫展示の濃さ
伊丹市昆虫館は、昆陽池公園の一角にある「生きた昆虫の博物館」です。最大の見どころは、約14種1000匹のチョウが一年中舞うチョウ温室。オオゴマダラ、ツマベニチョウ、リュウキュウアサギマダラなど、南西諸島や熱帯・亜熱帯を思わせるチョウが花のまわりを飛び、蜜を吸う、葉に止まる、人のすぐ近くを横切るといった行動を間近で観察できます。標本ではなく、生きたチョウの飛び方や翅の光り方まで見られる点が大きな魅力です。生態展示室では、ヘラクレスオオカブト、ゲンゴロウ、タガメ、ナナフシ、バッタ、ゴキブリなど約20種の生きた昆虫や小動物も展示され、チョウだけに偏らず、陸・水辺・樹上にすむ昆虫の多様な暮らしを比べられます。
600㎡の温室と10倍ジオラマで、昆虫の世界に入り込む
展示方法の特徴は、「昆虫を眺める」だけでなく「昆虫のスケールに近づく」構成です。チョウ温室は広さ約600㎡、高さ約15mの半球状ガラス温室で、チョウが上下左右に飛び回れる立体的な空間になっています。花に集まる個体、葉陰で休む個体、羽化直後の個体など、同じチョウでも状態によって見え方が変わるのが面白いところです。さらに、昆虫とそのすみかを10倍に拡大したジオラマでは、草の陰、土の中、樹木まわりで虫たちがどのように生きているかを、自分が小さくなったような視点で探せます。世界の昆虫標本を集めた展示では、擬態する虫、巨大な甲虫、色で身を守る虫などを見比べられ、温室の「生きた動き」と標本の「形の比較」が自然につながります。
飼育室と域外保全で、昆虫の命を次世代へつなぐ
繁殖・飼育の面でも、伊丹市昆虫館は見応えがあります。チョウ温室で産まれた卵を回収し、幼虫を毎日観察しながら、エサ換えや清掃を行い、卵・幼虫・さなぎを専用の飼育室で管理しています。温度、湿度、日長を整えながら育てることで、温室では年間を通してチョウが舞う環境が保たれています。つまり、来館者が見る美しい飛翔は、裏側の細やかな飼育技術に支えられたものです。さらに同館は、オガサワラハンミョウ、フチトリゲンゴロウ、フサヒゲルリカミキリ、マルバネクワガタ類、ウスイロヒョウモンモドキなど、国内希少野生動植物種の生息域外保全にも取り組んでいます。累代飼育や保全啓発を通じて、昆虫を「見る対象」から「守るべき生き物」へと意識を広げてくれる施設です。
昆陽池公園とつながる、身近な自然観察の入口
伊丹市昆虫館の魅力は、館内展示だけで完結しないところにもあります。周囲の昆陽池公園には水辺や緑地が広がり、トンボ、チョウ、バッタ、水生昆虫など、身近な昆虫を観察する環境がそろっています。館内で世界の昆虫やチョウの生活史を学んだあと、公園の草地や池のまわりに目を向けると、普段なら見過ごしていた小さな生き物の動きが急に見えてきます。観察会や企画展示では、季節の虫、擬態、幼虫、外来種、絶滅危惧種など、昆虫を切り口に自然を見るテーマも扱われます。関西の都市部にありながら、生体展示、標本、飼育技術、野外観察をつなげて昆虫の世界へ導いてくれる点が、伊丹市昆虫館ならではの強みです。
