施設の特徴
陸前高田市立博物館の特徴
世界唯一級のツチクジラと、三陸の海を物語る標本群
陸前高田市立博物館は、東北地方第1号の公立登録博物館として歩んできた、地域自然史の蓄積が濃い博物館です。生物展示で最も象徴的なのは、ツチクジラの剥製「つっちぃ」。全長9.7m、重さ525kgのメス個体で、ツチクジラの剥製として世界で唯一とされ、現存するクジラ剥製では日本最大級の資料として紹介されています。さらに「貝たちの部屋」では、世界各地から集められた約2,000点の貝類標本を展示。三陸の海を「魚の王国」として捉え、山から川、海へとつながる生物多様性を、魚類・貝類・昆虫標本などから見渡せる点が、沿岸の市立博物館ならではの魅力です。
標本を環境ごとに見せ、海と陸のつながりを体感させる
展示方法の特徴は、生物標本を単独で並べるのではなく、陸前高田の自然環境の中に位置づけて見せることです。「奇跡の海 三陸」では、豊かな海を支える山・川・海のつながりを、四季や環境ごとの生物相として紹介。「博物学の世界」では、地元の博物学者・鳥羽源藏と弟子の千葉蘭児のコレクションを通じ、昆虫・植物・貝類を採集し、分類し、記録する営みそのものを展示しています。子ども向けの「発見の部屋」には、チョウ、ガ、甲虫類などの昆虫標本を観察できるコーナーや、スケッチシート、クイズ用紙、体験キットが用意され、生き物を「見る」だけでなく、形の違いや暮らす場所を自分で確かめる入口になっています。
被災標本を救い、修復し、未来の研究資料へ戻す
繁殖展示を主軸にした施設ではありませんが、陸前高田市立博物館は、生物資料を守る技術と連携の面で全国的にも重要な存在です。東日本大震災で施設は全壊し、約56万点の資料が被災しましたが、全国の専門機関の協力により約46万点が救出され、安定化処理や修復が続けられています。特に昆虫標本は津波で浸水した標本箱約250箱が救済対象となり、脱塩・殺菌・同定・データベース化を経て、研究や教育に使える資料としてよみがえりました。ツチクジラ「つっちぃ」も国立科学博物館などの協力で修復され、新館では年次点検を受けながら展示されています。生き物を飼育して増やすのではなく、失われかけた標本を救い、地域の自然記録として未来へつなぐ点に、この博物館の大きな生物学的価値があります。
