施設の特徴
岩手県立博物館の特徴
岩手発の化石と希少生物標本で、県土の生物史をたどる
岩手県立博物館は、岩手県の県制100年を記念して開館した総合博物館で、地質時代から現代までの自然と文化を一体で見せる施設です。生物展示でまず注目したいのは、岩手県一関市花泉町で見つかったハナイズミモリウシ全身骨格です。約2万年前の氷期に生きていた北方系の野牛で、背中の骨の突起が長い独特の体つきから、寒冷な時代の大型草食獣を想像できます。さらに、岩泉町で発見されたモシリュウの上腕骨は、日本で初めて恐竜化石と確認された資料として知られ、近縁種マメンキサウルスの大型復元全身骨格とあわせて、岩手が国内の恐竜化石研究で重要な位置を占めることを実感させます。現生生物では、国指定天然記念物のヤマネ、国内希少野生動植物種のイヌワシ、早池峰山の固有種ハヤチネウスユキソウ、五葉山以外で確実な生育地が知られていないゴヨウザンヨウラクなど、岩手ならではの希少性をもつ動植物が並びます。
山・森・川・海へと視点が移る、岩手の自然を読む展示
展示方法の魅力は、生物を単独の標本としてではなく、岩手の地形・気候・植生の中に置いて見せることです。1階の「いわて自然史展示室」では、「地球史の中の岩手の自然」「早池峰山の自然」「山と森の生きもの」「里と川の生きもの」「浜と海の生きもの」といったテーマで、化石から現在の動植物までを地域環境ごとにたどれます。2階の生物分野「いわての今」では、西の奥羽山脈、東の北上山地、北上川低地帯、沿岸部の海流という地理条件が、植物相や動物相の違いを生むことを示しており、イヌワシが暮らす山、ホンシュウジカの北限として知られる五葉山、暖流と寒流が交じる三陸の海まで、県内の自然を立体的に理解できます。エントランスから続くスロープで巨大な恐竜骨格を見上げ、展示室で身近な森や川の生物へ進む動線も、古生物と現生生物をつなぐ導入として印象的です。
標本を守り、調べ、地域の自然を次世代へ残す
岩手県立博物館は、動物園や水族館のように飼育下繁殖を見せる施設ではありませんが、生物を未来の研究資料として守る保存・調査の面で大きな役割を持っています。収蔵資料目録には、維管束植物、岩手のチョウ、哺乳類・鳥類、両生類・爬虫類など、生物分野の目録が継続的に整理されており、展示で見る標本の背後に、県内の自然を記録し続ける地道な研究があります。東日本大震災後には、岩手沿岸部の博物館や関連施設が被災したことを受け、自然遺産を含む学術資料の救援と安定化処理にも関わり、被災した生物標本の救出・復元にも取り組んできました。観察会や「虫」をテーマにした館内探検のような子ども向け企画もあり、希少な標本を眺めるだけでなく、岩手の生き物を調べ、守り、次世代へ手渡す拠点として楽しめる博物館です。
