施設の特徴
北海道大学総合博物館の特徴
200万点級の昆虫標本を核に、北方圏の生物多様性を見渡せる
北海道大学総合博物館は、札幌農学校以来の研究で蓄積された膨大な標本を公開する大学博物館です。生物展示の核となるのは、約200万点に及ぶ昆虫標本コレクション。1896年に日本最初の昆虫学教室が札幌農学校に開設されて以来の蓄積で、新種・新亜種などの記載に使われたタイプ標本を1万点以上含み、アジア地区の昆虫標本コレクションの拠点とされる規模です。松村コレクション、中根コレクション、久万田コレクションなど、研究者ごとの標本群にも物語があり、甲虫、ガ、ホソガなどの形態や生活史を、分類学の歴史とともにたどれます。さらに魚類は約21万点、昆虫を除く無脊椎動物は約9万点を収蔵し、北海道・オホーツク海・ベーリング海など北方系生物の研究資料が厚い点も、国内の自然史系施設の中で大きな強みです。
標本を“研究の結果”として見せる大学博物館らしい展示
展示方法の魅力は、生き物を単なる珍しい標本として並べるのではなく、「誰が、どのように調べ、何を明らかにしたのか」まで見せることです。「生物標本の世界」では、陸上植物、菌類、海藻、昆虫、魚類を分野ごとに紹介し、採集・標本作製・分類研究がつながっていることを実感できます。昆虫標本では、採集方法や標本作成の説明もあり、きれいな虫を眺めるだけでなく、学名や分類がどのように決まっていくのかまで視野が広がります。「感じる展示室」では、引き出し内の標本や展示物を手に取って観察できる工夫もあり、観察する角度や手ざわりから、生物の形の違いに近づけます。古生物では、世界初の“完全版”として復元された全長8mのカムイサウルス全身骨格や、日本人が初めて発掘・研究・命名した恐竜ニッポノサウルスの復元骨格も見どころで、現生生物と古生物を同じ研究の流れで味わえます。
飼育・標本作製・分類研究をつなぎ、生物を未来の研究資料にする
北海道大学総合博物館は、動物園のように繁殖個体を見せる施設ではありませんが、生物を「飼って終わり」ではなく、将来の研究に使える標本として残す技術に特色があります。たとえば久万田コレクションのホソガ類は、幼虫が葉の中に潜って育つ潜葉性昆虫であるため、寄主植物ごと採集し、飼育して成虫標本を作ることが多い標本群です。その結果、寄主植物、幼虫、脱皮殻、成虫、交尾器標本までが組み合わさり、昆虫の生活史を立体的に追える資料になっています。これは展示生物を長く観察・管理し、研究に耐える形で残す大学博物館ならではの“飼育と保存の技術”です。加えて、パラタクソノミスト養成講座や市民向けセミナーを通じて、植物・きのこ・動物考古などの見分け方を学ぶ機会も継続されており、北海道の生物多様性を調べ、記録し、次世代へ引き継ぐ拠点として機能しています。
