概要
生態と外見
クマ科メガネグマ属 (単型属) の中型クマで、体長 1.2〜2.0 m・体重 60〜175 kg 級 (雄が大型)。全身黒色〜こげ茶の体毛、眼の周囲に淡黄色の眼鏡状斑紋 (英名 Spectacled bear・和名の由来、斑紋は個体差大)、丸い頭部と短い吻を持つ。南米アンデス山脈 (ベネズエラ〜ボリビア) の標高 250〜4,750 m の山地森林・パラモ草原に固有分布。南米唯一のクマ科。雑食性で果実 (パイナップル科ブロメリア)・新芽・小動物を採食、植物食比率がクマ科で最高 (95%)。IUCN レッドリストでは Vulnerable (VU) 評価。
他分類との違い
クマ科の他属と比べ、本属 Tremarctos は短面クマ亜科 (Tremarctinae) に属する現生唯一の属で、絶滅したアメリカ短面クマ Arctodus simus と姉妹群を形成する。他のクマ亜科 (Ursinae、ツキノワグマ・ヒグマ等) とは約 1,200〜1,500 万年前に分岐した古い系統で、短い吻と植物食適応が独自形質。
名前の由来
学名 Tremarctos ornatus の Tremarctos はギリシャ語 trēma (穴) + arktos (クマ) で、上腕骨に存在する顆上孔 (entepicondylar foramen) を指す古い解剖学的形質に由来。種小名 ornatus はラテン語「飾られた」で眼鏡状斑紋を指す。英名・和名はこの斑紋に由来。
興味深い特徴
短面クマ亜科に属する唯一の現生種で、生きた化石的位置付けで系統学的に重要。樹上に枝を集めて「巣 (platform)」を作る習性があり、パイナップル科ブロメリアの果実採食のため樹上に長時間滞在する。アンデス山地の食性ニッチで競合する大型哺乳類が少なく、植物食特化が可能となった。
明日使えるうんちく
南米アンデス山岳地帯の先住民文化では神聖視され、ウカマリ (Ukuku) と呼ばれる半人半熊の伝承的存在として祭事に登場する。児童文学「パディントン」のモデル (ペルー出身の「クマ」設定) として広く知られ、英国でのチャリティ募金活動で本種保護に資金が回るという文化的結びつきがある。
基本情報
Tremarctos ornatus
トレマルクトス・オルナトゥス
Spectacled bear
スペクタクルドベア
