概要
生態と外見
テナガザル科フクロテナガザル属の中型類人猿 (テナガザル科では最大種) で、体長 75〜90 cm・体重 10〜13 kg 級。全身黒色の長い体毛と、第 2・第 3 指が部分的に癒合した足趾 (種小名 syndactylus の由来) を持つ。喉に発達した鳴嚢 (gular sac) があり、発声時にグレープフルーツ大に膨張する。マレー半島南部・スマトラ島の熱帯雨林の林冠部に分布。IUCN レッドリストでは Endangered (EN) 評価。
他分類との違い
同科のテナガザル属 Hylobates (シロテテナガザル等) と比べ、体格が約 2 倍大きく、喉の鳴嚢が肉眼で明瞭に発達する点で識別される。属レベルで分離されており単型属 (Symphalangus) を構成する。同所的に分布するシロテテナガザルやアジルテナガザルとは縄張り重複が観察されるが、餌資源 (より葉食寄り) と発声パターンの違いで競合を回避する。
名前の由来
学名 Symphalangus syndactylus の syndactylus はギリシャ語「指が癒合した」を意味し、足の第 2・第 3 指の癒合に由来。属名 Symphalangus も「指趾骨を共有する」の意。英名 Siamang はマレー語に由来。和名「フクロテナガザル」は喉の鳴嚢 (袋) を持つテナガザルの意。
興味深い特徴
二重唱 (duet) は霊長類で最大級の音量を持ち、雌の長鳴き (great call) と雄のブーム呼びが交互に組み合わさる構造的に複雑な発声。鳴嚢の共鳴により 2 km 以上離れた場所からも聞こえる。葉食比率がテナガザル科で最も高く (40〜50%)、消化に時間を要するため移動量はシロテテナガザル等より少ない。
明日使えるうんちく
雄が育児に積極的に関与することが知られ、生後 8〜12 ヶ月から雄が日中の運搬・世話を主に担当する。テナガザル科では極めて稀な雄性育児の例として行動生態学的に注目される。生息地のマレー半島南部・スマトラ島の熱帯雨林伐採による生息地分断が深刻で、個体数推定は IUCN (2008、Mitra Setia et al.) 時点の約 22,000 頭から減少傾向。
基本情報
Symphalangus syndactylus
シュムファランガス・シュンダクテュルス
Siamang
シアマン
