基本情報
Mirounga angustirostris
ミルウンガ・アングスティロストリス
Northern elephant seal
ノーザンエレファントシール
生態と外見
アザラシ科ゾウアザラシ属の大型鰭脚類で、体長 2.5〜4 m (雄は 4〜5 m に達する)・体重 600〜2,300 kg 級と性的二型が極端に大きい。雄は成熟すると鼻先が伸長して垂れ下がる長い吻 (proboscis) を持ち、これがゾウの鼻を連想させる。体色は灰褐色〜暗褐色で、年 1 回 (春〜夏) 換毛時に皮膚ごと脱皮する catastrophic molt を示す。北東太平洋 (カリフォルニア沖〜アラスカ湾〜メキシコ・バハカリフォルニア) に分布し、繁殖はカリフォルニア・バハ沿岸の砂浜・岩礁上で行う。イカ・深海性魚類を主食。IUCN レッドリストでは Least Concern (LC) 評価。
他分類との違い
同属のミナミゾウアザラシ Mirounga leonina と比べ、雄の体重がやや小さく (ミナミゾウアザラシ雄は 3,000〜4,000 kg 級)、分布が北東太平洋に限られる点で識別される。アザラシ科の中でゾウアザラシ属は最深・最長の潜水能力を持ち、本種は記録上 1,500 m まで潜水し、最長約 2 時間水中に滞在する個体観測がある (Le Boeuf et al. 2000)。
名前の由来
学名 Mirounga angustirostris の Mirounga はオーストラリア先住民語 miouroung (ゾウアザラシ) のラテン化、種小名 angustirostris はラテン語 angustus (狭い) + rostrum (吻) で「狭い吻」を意味する。和名「キタゾウアザラシ」は南半球の Mirounga leonina (ミナミゾウアザラシ) との対比で「北の」を冠した名称。
興味深い特徴
19 世紀後半に油脂目的の捕獲で個体数が 100 頭未満まで減少したが、20 世紀メキシコ・米国の保護政策により回復し、現在は 17 万頭超 (NOAA 2020)。極端な遺伝的ボトルネックを経験した個体群として遺伝学・保全生物学の研究対象となっている (Hoelzel et al. 1993, Heredity 71:443-447)。雄同士の繁殖期闘争は砂浜上で繰り広げられ、咽頭部の革質皮膚と長い吻が防御に役立つ。
明日使えるうんちく
雌は出産後 25〜28 日哺乳した後、ほぼ絶食状態で出産前体重の 36% を失う。哺乳完了直前に再交尾し、受精卵は約 3 ヶ月の遅延着床 (embryonic diapause) を経て翌年の繁殖期に合わせて発育を再開する。母獣の摂餌回遊と繁殖回遊は性別で異なるパターンを示し、雌は東太平洋沖合域で深海イカを採食、雄はアラスカ湾の沿岸底生域で大型獲物を採食する。
