概要
生態と外見
タコ目マダコ科ヒョウモンダコ属の小型八腕類で、外套長 5〜7 cm・腕を含めた全長 10〜15 cm。体色は淡黄褐色〜灰白色の地に、興奮時に発する鮮やかな青色のリング状斑紋 (直径 2〜3 mm の同心円が数十個) が特徴で、警告色 (aposematism) として機能する。インド太平洋熱帯〜亜熱帯沿岸 (オーストラリア北部・東南アジア・パプアニューギニア) の岩礁・サンゴ礁・潮溜まりに分布。日本では南西諸島で記録されるが、近年は本州沿岸 (相模湾以南) でも報告例が増えている (海水温上昇との関連が指摘)。
他分類との違い
同属のオオマルモンダコ Hapalochlaena maculosa (オーストラリア南部) と比べ、リング斑紋がより大きく明瞭で個数が少ない。同じ毒持ちのタコは知られず、本属 (4 種) が唯一テトロドトキシンを持つタコ類。同じテトロドトキシンを保有するフグ類とは独立に毒を獲得した収斂的事例とされる。
名前の由来
学名 Hapalochlaena lunulata の Hapalochlaena はギリシャ語 hapalós (柔らかい) + chlaena (外套・マント) で「柔らかい外套」を意味し、本属の薄い体壁に由来する。種小名 lunulata はラテン語「小さな月 (lunula) を持つ」で、青色リング斑紋を月形と見立てた命名 (Quoy & Gaimard 1832 記載)。和名「ヒョウモンダコ」は江戸期からの呼称で、ヒョウ (豹) のような斑紋を持つタコの意。
興味深い特徴
唾液腺にテトロドトキシン (TTX) を共生細菌由来で含み、咬傷を介してヒトに致死的中毒を起こす。TTX はナトリウムチャネル Nav1 阻害剤で、現在も抗血清はない (人工呼吸器による対症療法のみ)。青色リング斑紋は皮膚下の虹色胞 (iridophore) による構造色で、興奮時に色素胞 (chromatophore) を周囲で収縮させてリングを際立たせる仕組み (Mäthger et al. 2012)。
明日使えるうんちく
リング斑紋は静止時にはほとんど見えず、警戒・威嚇時に約 0.3 秒で点滅様に発色する。日本での咬傷被害は年に数件報告され、海水浴・磯遊びでの素手取扱が主原因。「青色リング」は世界に 4 種知られ、いずれもインド太平洋に分布する。シドニー・グレートバリアリーフ周辺は特に密度が高く、警戒対象種となっている。
基本情報
Hapalochlaena lunulata
ハパロクラエナ・ルヌラタ
Greater blue-ringed octopus
グレイターブルーリングドオクトパス
10〜15 cm(腕を含めた全長(外套長5-7cm))
肉食(甲殻類が主)
岩礁・サンゴ礁・潮溜まり
インド太平洋熱帯〜亜熱帯沿岸(オーストラリア北部・東南アジア・パプアニューギニア)
