大きさ
300〜500 cm(腕を含めた全長(外套長30-50cm)・最大約9m)
生息環境
岩礁・砂礫帯(水深0-200m・最深記録約1500m)
分布
北太平洋寒帯〜冷温帯(日本北部・カムチャツカ・アリューシャン・アラスカ・カリフォルニア)
生態と外見
タコ目エンテロクトポデ科 (旧マダコ科に置かれた時期もある) ミズダコ属の大型八腕類で、外套長 30〜50 cm・腕を含めた全長は通常 3〜5 m、記録上の最大は約 9 m と現存タコ類中最大。体重は通常 10〜50 kg 程度、記録上の最大は約 70 kg 級とされる。体色は赤褐色〜灰褐色で、皮膚に深い皺と乳頭状突起を持つ。北太平洋寒帯〜冷温帯 (日本北部・カムチャツカ・アリューシャン・アラスカ・カリフォルニア) に分布し、通常は沿岸〜中深層 (水深 0〜200 m) の岩礁・砂礫帯、最深記録は約 1,500 m。魚類・甲殻類・他のタコや小型サメまで捕食。
他分類との違い
同科のマダコ Octopus vulgaris (温帯海域) と比べ、体格が桁違いに大きく寒帯海域に分布する。同属のミズダコ系統には E. magnificus (南米)・E. megalocyathus (南東太平洋) など複数種が知られ、本種は北太平洋固有。同じく大型のジャイアントタコ類は化石でも知られるが、現生種では本種が最大級。
名前の由来
学名 Enteroctopus dofleini の Enteroctopus は内臓 (énteron) + タコ (octopus) の合成語で、内部解剖学的形質に基づく属名。種小名 dofleini はドイツの動物学者 Franz Doflein への献名 (Wülker 1910 記載)。和名「ミズダコ」は江戸期から東北・北海道で「水の多い (柔らかい) タコ」「水っぽい身質のタコ」の意で呼ばれた。
興味深い特徴
腕の握力は強く、潜水時に大型 (15〜25 kg) の個体に抱きつかれると引き剥がしが困難となる事例が報告されている。寿命は 3〜5 年とタコ類としては比較的長く、巨体に応じた成長期間を要する。求愛行動では雄が交接腕 (hectocotylus) を雌の外套腔に挿入して精莢を渡し、雌は数か月かけて 5 万〜10 万個の卵を糸状に岩盤に貼り付け、孵化まで絶食で世話する。
明日使えるうんちく
サメ (主にネズミザメ・ドチザメ類) を捕食する事例が飼育下と野外の双方で観察されており、軟体動物が脊椎動物を捕食する希少例として注目される。日本では「アシナガダコ」「マダコより大きいタコ」として漁獲され、刺身・煮蛸として流通する。北米先住民 (アリュート・トリンギット) の伝承にも巨大タコの記述が残り、海洋伝承の「クラーケン」モデルの一部に本種が含まれた可能性が指摘される (Salvador & Tomotani 2014)。
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