概要
生態と外見
アザラシ科ズキンアザラシ属の中型〜大型鰭脚類で、体長 2.2〜2.7 m・体重 200〜400 kg 級 (雄が大型)。体色は淡銀色〜灰色の地に黒色の不規則斑紋が散在する。雄は成熟すると頭部に左右いずれかの鼻孔から伸ばせる弾力性のある赤色の「鼻嚢 (nasal membrane)」を持ち、これを膨らませて頭部に大きな袋を形成できる。北大西洋・北極海の流氷帯に分布し、繁殖はカナダ東岸沖・グリーンランド沖・ヤンマイエン島周辺の流氷上で行う。深海性のイカ・魚類を採食。IUCN レッドリストでは Vulnerable (VU, 2008 評価)。
他分類との違い
同科のタテゴトアザラシ Pagophilus groenlandicus と分布が重なるが、雄の頭部にある膨張可能な鼻嚢の存在で容易に識別される。背中のハープ形斑紋は持たず、斑紋は不規則。同じ深海潜水型のキタゾウアザラシ Mirounga angustirostris と比べ、体重は中型クラス (キタゾウアザラシの 1/4〜1/5) で、雄の誇示器官は鼻嚢 (口腔由来でなく外部膨張型) である点が形態学的に異なる。
名前の由来
学名 Cystophora cristata の Cystophora はギリシャ語 kystis (袋) + phorein (運ぶ) で「袋を運ぶ者」、種小名 cristata はラテン語「冠羽のある」を意味し、雄の鼻嚢を指す。和名「ズキン (頭巾) アザラシ」は雄の頭部に膨張する鼻嚢を江戸期の頭巾に見立てた呼称、英名 Hooded seal も同じ形態由来。
興味深い特徴
雄の鼻嚢誇示行動には 2 種類あり、(1) 鼻全体を風船状に膨らませる行動と、(2) 片方の鼻孔から赤色の弾力膜を口外に押し出す行動が知られる。雌の哺乳期間は鰭脚類で最も短く、約 4 日間で子は体重を 1 日あたり 7 kg 増加させる急速哺乳を行う (Bowen et al. 1985, Can J Zool 63:1898-1903)。
明日使えるうんちく
潜水能力は最大 1,000 m 級と本科で最深クラスに属し、深海性のサメ類・タコ類・スケトウダラ類を採食する。本種の母乳脂肪含有量は約 60% と哺乳類で最も高く、極短期間の哺乳で大量のエネルギーを子に転送する戦略をとる。北西大西洋系群は商業狩猟の対象とされたが 1996 年以降カナダで規制が強化された。
基本情報
Cystophora cristata
キュストフォラ・クリスタタ
Hooded seal
フーデッドシール
