概要
生態と外見
カルキヌス科 (Carcinidae) カルキヌス属の中型カニで、頭胸甲幅 6〜10 cm 級・体重 100〜300 g 級。体色は緑褐色〜暗緑色 (幼若個体ほど鮮緑色) で、成体雌では赤橙色寄りに変化する個体もある。頭胸甲側縁に 5 個の鋭歯を持つ。北東大西洋 (ノルウェー〜北アフリカ西岸) 原産で、世界最も成功した侵略的甲殻類の一つとして北米・オーストラリア・南アフリカ・日本沿岸に侵入定着している。潮間帯から水深 60 m の岩礁・砂礫・河口域に広く分布。
他分類との違い
ヨーロッパイチョウガニ Cancer pagurus と比べ小型で頭胸甲側縁の歯が 5 個と少なく明瞭。同じく北東大西洋のカニ類 Necora puber と異なり、第 5 歩脚先端の毛束 (swimming hair) が無い (本種は完全な歩行型)。ガザミ Portunus trituberculatus と異なり、第 5 歩脚が平らな遊泳脚化していない。
名前の由来
学名 Carcinus maenas の属名 Carcinus はギリシャ語 karkinos (カニ) に由来、種小名 maenas はギリシャ神話の「マエナデス (Maenads)」(バッカスの女信者) を意味するとされ、命名意図は諸説ある (狂乱的行動を喩えた説あり)。Linnaeus により 1758 年に記載。和名「ヨーロッパミドリガニ」は原産地と緑色の体色に由来する直訳。
興味深い特徴
侵略性の高い海洋甲殻類の一例として知られる。日本では 1984 年に東京湾で初確認、その後伊勢湾・大阪湾等に拡大。攻撃的捕食性で在来貝類 (アサリ・ハマグリ) 漁業に深刻な被害を与える。塩分耐性が広く (0.5〜35 psu)、汽水〜外洋まで生息可能で侵入定着に有利な生理特性を持つ。
明日使えるうんちく
侵入地の北米東岸では「shore crab」とも呼ばれ、二枚貝養殖業への被害が深刻でメイン州・ワシントン州で大規模駆除事業が実施されている。原産地の欧州では古来食用 (小型のため食卓には不向きだが、ソフトシェル個体は珍味)。日本の侵入個体群は遺伝的多様性が低く、少数創始集団から急速拡大した bottleneck pattern を示す (Darling et al. 2008 等の集団遺伝解析)。
基本情報
Carcinus maenas
カルキヌス・マエナス
European green crab
ヨーロピアングリーンクラブ
6〜10 cm(頭胸甲幅)
100〜300 g
雑食
岩礁・砂礫・河口域(潮間帯から水深60m)
北東大西洋原産(ノルウェー〜北アフリカ西岸。北米・豪州・南ア・日本に侵入)
